熱刺激電流(Thermally stimulated current,
TSC)測定は、薄膜・粉末試料を冷却した後に加熱した際に生じる電流を測定することで、試料内の基礎物性を評価する熱分析手法の一種です。歴史は古く、1970年代から誘電体に関するTSCが盛んに研究されており、近年その応用範囲は絶縁体や半導体へと広がっています。例えば、電荷トラップの評価はトラップ電荷の空間分布やトラップ準位の起源、バンドテイル構造などを調べることができるため、太陽電池やトランジスタなどの半導体デバイス解析に応用されています。測定試料の微細化にともない要求される測定感度が高くなっていますが、電気計測機器も進歩を続けており、最近ではフェムトアンペアの信号を捉えることが可能になってきました。
この様に開発以来長い歴史が有る本手法は、電子デバイスの研究開発における有用性・汎用性が高いにも関わらず、研究開発への利用は限定的であり、その認知度もあまり高いものではありません。そこで、評価・解析技術の向上、ユーザー間の技術的情報交換、評価法への理解を広く普及する意味で、ユーザー間の交流の場としての本研究会が設立されました。